□ 宮沢賢治の方言短歌 2 □



『鹿踊りのはじまり』より 鹿たちの歌

(歌部分のみ抜粋)

はんの木の
みどりみぢんの葉の向さ
ぢやらんぢやららんの
お日さん懸がる。


お日さんを
せながさしよへば、はんの木も
くだげで光る
鉄のかんがみ。

お日さんは
はんの木の向さ、降りでても
すすぎ、ぎんがぎが
まぶしまんぶし。

ぎんがぎがの
 すすぎの中さ立ぢあがる
  はんの木のすねの
  長んがい、かげぼうし。

ぎんがぎがの
すすぎの底の日暮れかだ
苔の野はらを
蟻こも行がず。

ぎんがぎがの
すすぎの底でそつこりと
咲ぐうめばぢの
愛どしおえどし。
 

宮沢賢治は童話『鹿踊りのはじまり』の中でもこのような方言の歌を残しています。
鹿踊りは岩手・宮城県に伝わる伝統芸能で、角のついた鹿の面をかぶり、
背にはさし物を背負い、胸の前に抱いた太鼓をたたいて踊ります。

 

ある日、嘉十(かじゅう)は足の湯治に出かけます。
嘉十は歩き疲れ、休憩をとったときに食べた栃団子の残りを
鹿にあげるつもりで少しばかり草の中に残してきます。
嘉十は休んだところに手拭いを忘れ、取りに戻ります。

 そこへ鹿が現れます。
鹿たちはどうも嘉十の手拭いを不審に思っているようです。
嘉十は草むらに隠れてその様子をうかがいます。
不思議なことに、嘉十の耳に鹿の話し声が聴こえてきます。
鹿たちはかわるがわる手拭いを見ては不安がっています。
ただの手拭いだというのを知らないのです。

しばらくして、手拭いが怖くないものだと確信した鹿たちは
手拭いを囲んで歌い踊り始めます。
手拭い問題が解決したあとは、
団子を食べ、めいめいに歌い出します。
それが上に書き抜いた歌です。

 「ぢやらんぢやららん」や「ぎんがぎが」といった擬音語や擬態語に
北東北の人らしさを感じずにはいれません。
下北の人もこの手の言葉をよく使うので、
親近感がわきます。
 
むつ市ー花巻市間は約250km。
ともにかつて南部藩の領地内にあった場所です。
私自身が下北弁を使い、詩を書くことでほんの少し賢治が
見えてきたかのように思えます。


 賢治の方言短歌 1 
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